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13  エデンの科学力

Penulis: KAZUDONA
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-22 15:46:35

「さて、アステリオンが帰ってくる前に、お着替えタイムといこうか?」

 カシューがまたベルを鳴らすと、リア達メイド部隊が部屋にやって来た。うわぁと露骨に嫌な顔をするカリナを尻目に、その場に簡易用の着替えスペースをカーテンを広げて作ると、そこに嫌がるカリナを連れ込んだ。

「またかよー!」

「さあさあ、今回の新作ですよー」

 ぽいぽいと脱がされ、新しい衣装を着せられた。赤いフード付きのロングコートに下は水色のチュニック、白いヒラヒラの膝上までのスカート。水色のニーハイソックスにピンクのブーツである。

「では次回も楽しみにして下さいねー」

 へろへろになって更衣スペースから出て来るのと同時に、メイド隊は帰っていった。

「ここに来る度にこれが待っているんじゃないだろうな?」

「あはは、今回のもよく似合ってるよ。彼女達も創作意欲が湧いて楽しんでるんじゃないかな?」

「私は着せ替え人形じゃないんだぞ」

 ぶつぶつと文句を垂れながら、部屋に用意してあった姿見で自分の姿を見る。至る所にリボンがあしらわれていてまるで魔法少女である。まあ似合わないこともないかとカリナは思った。メイド達が楽しそうならそれはそれでいいのかもしれないと思い直すことにした。

「どう? 気に入ったんじゃないの?」

「まあ、自分でこんなのを選んだりはしないから新鮮ではあるかもな。それにメイド達がこれで楽しみができているのなら、そこまで邪険にすることもないだろうとは思ってる」

「人間ができてるねえ」

「いや、そこまでの結論にはならんやろ」

 二人で会話をしていると、隣の部屋からエクリアが入って来た。いつもながら見た目だけは完璧な美人である。

「よお、来てたのか。こっちは東の地の魔物掃討が大方終わったところだぜ、ってまた可愛らしい衣装を着せられたもんだなー」

「うるさいぞ。こいつとメイドの趣味に付き合ってやってるだけだからな。自発的に要求してないから」

「まあまあ、似合ってるんだからいいじゃんか。俺が着たら身長のせいもあってかなり痛々しいからな。可愛い衣装が着れるってのはそう考えるといいものだと思うぜ」

 エクリアの身長は170以上ある。今のカリナが150㎝程度なので、並ぶと身長差が相当大きい。

「さすが根っからのネカマは言うことが違う。だったらキャラメイクのときにもっと小柄にすれば良かっただろうに」

「うーん、やっぱ高身長で大人な女性に憧れるじゃん。だからこうなったんだよ。でも小さい女の子も悪くないな……」

「犯罪者臭いよ、今の発言」

 カシューがツッコミを入れる。昔ながらの友人PCと過ごす時間は感覚を現実に戻してくれる貴重な時間である。今のこの閉じ込められたゲーム世界では、現実にいた頃の話を彼ら以外とすることはできない。NPCはこの世界の住人であり。この世界を現実として生きている。それに最早NPCというよりそれぞれの人生を生きる独立した存在なのである。

 彼らと話をして過ごすことも大事な時間ではあるが、カリナ達にとってはリアルの友人として過ごすことができる、この関係が心地良いものであった。

「で、明日から聖光国に向かうんだって?」

「ああ、サティアの痕跡があるかもしれないからな。結構な長旅になるとは思うけど」

「電車でもあればねぇ、気楽に旅ができるんだけど。さすがにそこまでの技術的発展は望めないよね」

「カシューが作ればいいんじゃないか?」

「そうだな、戦車とかいう名のついた妙な自動車は作った訳だし」

 カリナとエクリアがそう言ってカシューを見た。

「うーん、この国の影響下にある地域一帯になら不可能じゃないかもしれないけど、さすがに大陸全土に線路を引くのは難しいよ。一応近場の街までの電車を作る計画はあるんだけどね。今は職人達の努力次第ってとこかな」

「すごいな、冗談で言ったのに。もうそこまで計画が練られていたとは……」

「俺も職人達が何かしらの計画を話してるのを耳にしたことはあるけど、まさか本当に実行に移っていたなんてなあ」

「まあね、でも他国にまで鉄道を繋げるのは大変だよ。その国との利害関係とかもあるし、あんまり現実的じゃないんだよねぇ……大陸全土を繋げるとなると人手も足りないからね」

 カシューの頭の中には既にその構想があるのだろう。恐らく他国との交渉も始めているのだろうと二人は思った。

 そうして話をしていると、ドアがノックされ、アステリオンが戻って来た。手には小型のイヤホンの様な物が乗せられている。

「完成しました。小さく削った魔法石を触媒にして、使用者の魔力を消費することで遠隔通信が可能になります」

 その二つのイヤホンを受け取り、カシューは一つを自分の左耳に着けた。

「よくやったアステリオン。これで遠征中のカリナと連絡手段が確保できる。行方不明の幹部の探索に大いに役立つ」

「いえ、上手くいって良かったです。それでは何か不具合が発生したらいつでも言いつけ下さい。失礼致します」

 一礼するとアステリオンは退室して行った。

「良い部下を持ったものだな」

「そうだな、あいつは優秀だぜ。うちのレミリアももうちょい実力が付けばいいんだけどなー」

 頭の後ろで手を組んで、エクリアがそんなことを言った。

「そうか? 以前一緒に討伐に行ったけど、充分な戦力だったと思うぞ」

 先日西に悪魔と魔物の討伐に行ったことを思い出して、カリナはそう言った。

「まあ、及第点だな。もうちょい、何て言うのかなあ、破滅的な大魔法が使えるようになってくれたらなぁ」

 それでは災害級のエクリアが二人に増えるだけじゃないかとカリナは思ったが、口には出さないでおいた。

「さて、盛り上がってるところ悪いけど、カリナ、これを左耳に着けてみてくれるかい? フックを引っかけるとしっかり固定されるから」

 手渡されたイヤホンを左耳に装着する。

「魔力を通して何か喋ってみてくれるかい? マイクの役割も兼ねてるから、小さな声でも聞こえるはずだよ」

「ああ、やってみよう」

 魔力を左耳に集中させる。そして「もしもし」と小声で呟くと、それがカシューのイヤホンに伝わった。

「もしもし、だね」

「おお、かなりの小声で言ったのにちゃんと聞こえるんだな」

「うん、感度もバッチリだね。これで僕から通信するときは僕が魔力を込めるだけで済む。常に会話が筒抜けになる訳じゃないから、必要な時だけ通信してくれればいいよ」

 それをソファーで見ていたエクリアは「ほー」と声を出した。

「すごいな、カリナが喋ったのは俺には聞こえなかったってのに。でもこれなら何処に行っても連絡が可能になるだろうな」

「うーん、だといいんだけどね。天候や高度などによっては通信が乱れる可能性もないとは限らないから。でもまあこれで何かあった時はいつでも連絡が可能になるよ」

 ふふん、と胸を張るカシュー。友人ながらいつもその探求心には驚かされる。今回も遠隔通信機をこの中世ファンタジー世界に作ってしまった。心強い友がいることを嬉しく思う。

「まあ、何にせよこれで何かに行き詰まった時にはカシューの知恵が借りられるということだな。大事に使わせて貰う」

「あはは、他国の動向を知るのも王の役目だからね。カリナには体のいいスパイになってもらえると助かるよ」

「あーあ、本音はそれか。全く、余計な一言が玉に瑕だな」

 エクリアがやれやれと溜め息を吐いた。カリナも感心した自分の感情を返して欲しいと感じていた。

「いやいや、変な意味はないからね。また悪魔の襲来があるかもしれない現状、他国の情報を知っておくに越したことはないってことだよ?」

「まあ、そういうことにしておく。とりあえず、聖光国に着いたら連絡は入れるようにするよ」

「そうだね、よろしく頼むよ。さて、もう夜だし夕飯にでもするかい?」

「いや、今日はルナフレアに夕飯には戻ると伝えてあるから遠慮しとくよ。また明日出発前にな。お休み」

 小型通信機が完成したところで、この会はお開きとなった。カリナはルナフレアの夕食を楽しみに自室へと帰って行った。

 ◆◆◆

 カードキーで自室の扉を開ける。この技術もこの世界では最先端のものだろう。カシューは本当にこういうものを発明するのが上手いのだなと、カリナは感心した。実際に作成しているのは職人達なのだろうが、実現性がなければ創ることはできない。改めてエデンの科学力に感嘆せざるを得ないとカリナは思った。

 自室の中に入ってルナフレアに「ただいま」と声をかけると、奥からルナフレアがパタパタと走って来て出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、カリナ様。陛下に夕食に誘われたのではありませんか?」

「ああ、でも今日は君との約束があるからと断って来たよ。もう準備はできてるのか?」

「もう少しで完成です。ですが、その前にカリナ様と入浴をしなければいけませんから。って、あら、また新しい衣装ですか?」

「また一緒に入るのか? まあいいけど、これか? リア達メイド隊の新作だとさ。あそこに行く度にフリフリの衣装が増えていくんだよな」

「よく似合っていますよ。さすがリアさん達、やりますね。私も何か新しく作ってみようかしら?」

「無理はしなくていいよ。私の世話をしてくれているだけで十分だからね。さて、じゃあ風呂に入ってこようかな」

 浴場に向かうカリナをルナフレアが追いかける。そしてカリナの衣装をてきぱきと脱がしてから、綺麗に折り畳み、カリナが今日着ていた衣装を受け取ると、それを洗濯籠に入れた。

「いつも済まないな」

「いいえ、これが私のお勤めですから。カリナ様にお仕えできて幸せですよ」

 素直にそんなことを言われると照れてしまう。そんな顔を見られないようにして、全裸になったカリナは浴場へと入って行った。メイド服を脱いだルナフレアもカリナを洗うために後を追った。

「なあ、毎回一緒に風呂に入るのか?」

「嫌ですか?」

「いや、そういう訳じゃないんだけど……」

「今は女の子なのですから、気になさらないで下さい。それにカリナ様をお綺麗にして差し上げることができるので、お風呂は私にとっては幸せな時間なのですよ」

 そこまで言われては仕方がない。それに今は自分も女性である。変な気を起こすことなどまずない。そう考えると、ルナフレアの幸せを優先してあげることの方が大切なように思えた。

 長い髪の毛とくせ毛のツインテールを丁寧に洗い、スポンジで全身も隈なく磨いてくれるルナフレアの嬉しそうな顔を見ると、もう断ることはできないだろうなとカリナは思うのだった。

 のんびりと二人で湯船に浸かる。一日の疲れが癒されていくような心地よさを感じた。

 ◆◆◆

「今日は明日からのエネルギーにして頂くために肉料理を多めにしておきました。たくさん食べて下さいね」

「おお、美味そうだな」

 ルナフレアの心遣いが身に染みる。上品な味付けで作られた料理を楽しみながら、カシューと話したことや今日の出来事について会話する。何気ないひと時だが、それが二人にはとても美しいものに感じられた。

 もし結婚とかしたら毎日がこんな感じなのだろうか? まだそんな経験のないカリナはそんなことを思ったが、ルナフレアは側付きであってそのように見てはいけない存在である。だがルナフレアにとっては、妖精の加護を与えた伴侶のような存在がカリナなのである。

 妖精は老いることなく悠久の時を生きる。今の関係はカリナがPCで、歳老いることがないからこそ成り立つものであろう。今のこの世界が続く限りはこの幸せを大切にしていこうとカリナは考えることにした。

 夕食後、リラックスして過ごしてから就寝する時間になると、ルナフレアがまたカリナの寝室にやって来た。カリナは何も言わず彼女をベッドに招き、一緒に横になって天井を見上げた。

「明日からまた独りになってしまいます」

 その言葉に、長い間孤独にさせてしまった自分の胸が苦しくなる。

「大丈夫だよ。ちゃんと帰って来るから。もう君を独りぼっちには絶対にしないから」

「はい、信じています……」

 二人は手を繋いで目を閉じた。明日はいよいよ聖光国に向けて出発である。それまでは彼女の思いに応えようと思うカリナだった。

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